サンワード株式会社
池田 智幸
環境を考慮した物作りに共感し、今回の廃車再生プロジェクトに参加させていただきました。カバン・袋物の縫製工場として皆さんが"笑顔"になる物作りをモットーにしています。
PRODUCTS
ラウラウジ ハイテツ
OsakaMetro全路線をイメージした8色のナイロンに、白い吊り輪のアクセント。底の補強部分に「貫通幌」から取った生地を活用し、下げ札はなんと地下鉄の切符を模したもの。企画デザインから裁断、縫製まで、一社完結のワンストップでつくり上げたこだわりのバッグからは、「手に取る人を笑顔にしたい」という思いが伝わってきます。
※本ページの製品画像は試作品のため、実際の製品と異なる場合があります。ご了承ください。
このユニークなバッグの発案・企画・製造を行ったのは、大阪を拠点に袋ものやバッグの縫製を担うサンワード株式会社。さまざまなブランドのOEMを手がける一方で、自社企画のものづくりに積極的に取り組んでいる会社です。廃材を利用したものづくりも、今回が初めてではありません。2012年には廃棄される消防ホースをリユースしたバッグを発表。ほかには再生PET素材を使用したバッグもあり、それらの環境考慮型商品は、清らかで美しいことを意味する日本の古語「らうらうじ」から取ったブランド名で世に送り出しています。社長の池田智幸さんによれば、「廃車の吊り輪を使いたい」というアイデアも、すでに2020年あたりから温めていたのだとか。
池田
「ですから廃車再生プロジェクトのことを聞いた時は、ぜひ参加したいと思いました。吊り輪を使ったバッグのイメージは、もうその時点でだいたい頭の中にできていたんですよ。ただ車両見学会に行って貫通幌を見た時、これも使いたいなと思ったんですね。何といっても丈夫でしたし、うちにはあの生地を縫えるミシンもありますので。」
「貫通幌」とは、車両間をつなぐ通路を覆う蛇腹状の幌。布に塩ビコーティングをほどこしたタフな厚手素材でできています。こうして使いたい部材は決まりましたが、そこからさらにスタッフと議論を重ね、企画を掘り下げたのがサンワードらしいところです。
池田
「廃車から出る吊り輪と幌を使って環境に配慮したバッグをつくりました、というだけじゃなくて、手に取った人も、つくる人も笑顔になれるようなものって何だろう?と。うちの企業理念は、ものづくりを通して笑顔いっぱいの社会に貢献することですから、ここは絶対外せないですね。そう考える習慣は、自社ブランドに取り組むようになったここ10年の経験から学んだことだと思います。社内みんなで話し合いながら、“せっかく地下鉄が8路線あるんだからその8色を使おうよ”とか、“切符を下げ札にしてみようよ”というふうにアイデアを積み上げていきました。」
廃材をリサイクルした環境配慮型商品以外にも、東日本大震災で被災地となった福島県の障がい者施設と一緒にブランドを立ち上げたり、フェアトレードを取り入れたものづくりで、東アフリカやバングラデシュの生産者を支援したりと、ソーシャルグッドな活動を数多く行ってきたサンワード。その歩みが、「みんなで考える」社風につながっているようです。
試作品づくりのプロセスで特に大変だったのは、貫通幌の取り扱い。巨大な幌を引き取って持ち帰った時は、池田さんもさすがに一瞬たじろいだそうです。
池田
「鉄パイプも入った状態の丸ごとでしたから、まずそのパイプを外すところからのスタート。これがそんなに簡単に外せないんですよ(笑)。一人が幌を支えて持って、もう一人がはさみで切っていくんですが、さらにそこから生地を洗浄して消毒して乾かして、やっと使える状態になります。穴が開いているところや傷がついているところもあるので、使える部分を選んで型取りするのがむずかしいんですよね。」
こういった苦労も経て発表されたのは、2WAYトートバッグとショルダーバッグの2型。「らうらうじ」のブランド名を横文字にアレンジし、サブネームとして「HAITETSU(廃鉄)」をあしらいました。
池田
「トートバッグは僕が以前から考えていた形状ですが、このサイズ感やポケットの形状にたどり着くまでに、何度も試作をやり直しているんです。10年ほど前に滋賀に自社工場を立ち上げてから、そういった試行錯誤がやりやすくなりましたね。
スタッフには若い女性が多いので、彼女たちの意見がかなり取り入れられています。社長の僕よりも発言力ありますから(笑)。一方のショルダーバッグは、今人気の小ぶりなサイズ。マグネットやボタンの代わりに、かぶせの部分に吊り輪がついていて、重みで自然にフタが閉まるようになっているのと、開閉の際につかみやすいというメリットがあります。」
今後はバックパックタイプも展開したいと意欲を見せる池田さん。
池田
「こういう活動をしていると、“ちょっと集まって話そうよ”ということが、ごく普通になってくる。みんなで、こんなのやろう、あんなのやろう、ってワイワイガヤガヤ楽しみながらつくることで、商品に愛着が生まれるし、それは手に取る方にも何かしら伝わると思うんです。」
性別も年齢も問わず、それぞれが自分にぴったりなマイバッグが見つかる「RAU-RAU-G HAITETSU」。思い入れのあるメトロの路線に合わせてカラーを選ぶ、などの楽しみも広がりそうです。
池田
「純粋に、面白いデザインだなと興味を持って手に取ってみたら、実は廃車の部品を使っているとわかって、“へえ~っ!”となる……そういうのが理想ですね。僕は常々、かばんってコミュニケーションツールであってほしいと思ってるんです。“これ実は地下鉄の吊り輪でね、面白いでしょ”って、周囲の人に話したくなる。そして聞いた方も面白がって笑ってくれて、かばんを介して楽しい会話が広がる、というような。そういう役割を果たしてくれるかばんをつくることが、僕たちらしさだと思っています。」
Project Partner
環境を考慮した物作りに共感し、今回の廃車再生プロジェクトに参加させていただきました。カバン・袋物の縫製工場として皆さんが"笑顔"になる物作りをモットーにしています。