サン・クリエイト
藤井 本道
グラフィックデザインの一環として製品開発に携わって数十年。様々な素材とも出会い、数多くのものを開発してきました。単に物をデザインするだけでは無く、どう売るか、売れるかを常に考えています。
PRODUCTS
いつもの通勤・通学風景で見慣れた、白い吊り輪とその上に収まっている細長いプラスチックの広告枠。メトロらしさ漂うこのパーツが、高級感あふれる本革やしゃれたスタッズづかいと出会って、こだわりのペットグッズに生まれ変わりました。その発想には、長年、犬や猫たちと一緒に暮らしてきた動物好きの目線と、商業デザイナーとしての経験値が生きています。
※本ページの製品画像は試作品のため、実際の製品と異なる場合があります。ご了承ください。
大阪市にて1976年に設立されたデザイン会社・有限会社サン・クリエイトは、大手メーカーの製品パッケージデザインをはじめ、グラフィックデザインからウェブデザインまで幅広く手掛けています。会社創立時から40年以上にわたって在籍し、15年前に代表の座を受け継いだ藤井本道さんにとって、自社のオリジナル製品を企画開発するのは初めてのトライアル。
藤井
「廃車再生プロジェクトの情報を耳にした時に、参加してみようと思った最大のきっかけはコロナ禍ですよね。それまでやっていた通常業務のうち、時間ができたので、今なら新しいことにチャレンジできるな、と。」
藤井さんとスタッフの2名で企画を出し合い、2案提出したうち、採用されたのが愛犬リードでした。
藤井
「今やアップサイクルのものづくりはあちこちでされていますが、せっかくやるならひと目で地下鉄車両がイメージできるものにしたいと思って、それを発想の出発点にしました。吊り革の白い輪の部分だけじゃなく、広告枠や留め具も含めて、なるべく全体を使おうと考えたのもそのためです。」
実際の製品化に向けた試作品づくりでは、ペットショップに足を運んだり、インターネットで市販のリードを見比べたりとさまざまなリサーチを重ねた藤井さん。市場調査は、ふだんの仕事でも重要なだけあって慣れたもの。
また、これまでに24年というギネス級の長寿をまっとうしたポメラニアンや、のべ10匹もの猫と暮らした経験のある動物好きな藤井さんにとって、ペットグッズはごく身近な存在でもありました。
藤井
「リードの長さやスタッズの打ち方などの細かいディテールは、私が図面を引いて決めました。レザーの色や、首輪につなぐナスカンも、いくつか見比べた中から選んで……。
その上で実際の製造をお願いしたのは、大阪の株式会社フジリュウさんという革加工専門の会社さんです。
ポイントは、プラスチックの広告枠が吊り輪の根元にぴたっと固定されて動かないよう、金具をストッパーにしているところ。ここがバラバラになってしまうと吊り革の世界観が崩れてしまいますし、パーツがグラグラして指を挟んだりしてもいけませんから、固定する手法についてはフジリュウさんと細かく相談しましたね。
ここの広告枠は、愛犬の名前を入れたり、ステッカーを貼ったりして持ち主が自由にカスタマイズできる点が面白いと思うんです。」
こうした経緯を経て完成したのは、使い込むほど味わいが出そうな本革が生きた高級感のあるリード。試作品の完成と同時に、使用上の注意が記載されたパッケージまで作り込んでセットでお披露目したところに、パッケージデザイナーならではの目線が光っています。
藤井
「やはり、ペットグッズは安全性が第一なので、誤った使い方で万一のことが起きないように小・中型犬用と明記するなど、必要な文言を調べて書き出しました。本革なので水濡れによって色落ちの可能性があることもそうですし、吊り輪に手首を通してリードをつかむのは危険なのでやめてください、という注意喚起などですね。」
通勤や通学で毎日お世話になっている吊り革は、大阪の日常を象徴するアイコン的造形物かもしれない、と語る藤井さん。それを愛犬との散歩で使えるところがユニークです。
藤井
「デザイナーとしては、今回のものづくりを通して、この吊り輪の円周や太さって、どうやって導き出されたんだろうということに改めて興味が湧きました。細すぎもせず太すぎもせず、誰もがつかみやすいという意味のあるサイズなんでしょうね。あらゆる乗客が電車の中で安全を確保できるようつくられているので、その安心安全という感覚を、愛犬との散歩でも味わっていただけたらと思います。
あとは自分の年齢的にもリアルな話ですが、リタイアした方たちにとっても、ちょっと楽しいんじゃないかと……。長年通勤で慣れ親しんだ吊り革が、自分のそばにあって毎日使えるというのは、気持ちに張り合いを与えてくれる面もあると思うんです。ぜひ幅広い愛犬家に使っていただきたいですね。」
Project Partner
グラフィックデザインの一環として製品開発に携わって数十年。様々な素材とも出会い、数多くのものを開発してきました。単に物をデザインするだけでは無く、どう売るか、売れるかを常に考えています。