D2inc
高山 勝己
ディスプレイ会社、空間プロデュース会社を経て、1999年「D2」を設立。博覧会や博物館、商業空間などの企画・デザインやプロダクト、デジタルコンテンツのデザイン・制作など幅広い活動を展開する。
PRODUCTS
ツレテッテ
明るいベージュの帆布と黒のコンビネーションに、Osaka Metro 全路線のシンボルカラーのパイピングがきらり。そして意外なところについている白い吊り輪は、小さな子どもがつかめるようにと考えられたもの。ビジネスモデルから考えることを得意とするプロデューサーが、大阪の知られざる地場産業のひとつである「革鞄づくり」の担い手とタッグを組んでつくりあげたバッグ。そこには、暮らしと地下鉄、そして親と子をつなぐコンセプトがありました。
※本ページの製品画像は試作品のため、実際の製品と異なる場合があります。ご了承ください。
商業空間や文化施設のデザイン・プロデュースからコンテンツ制作まで、幅広いクリエイティブワークを手がける有限会社ディーツー。取締役社長の髙山勝己さんはこれまでに色々な地域の地場産業と組んでオリジナル製品開発を行ってきた経験の持ち主です。
髙山
「車両見学会に行って僕が思ったのは、せっかくサスティナビリティというテーマで何かプロダクトをつくるのであれば、ある程度ビジネスレベルで量産できるものにしたいということでした。それで目をつけたのが、数量が確保できる吊り輪と貫通幌です。」
「貫通幌」とは、車両間をつなぐ通路を覆う蛇腹状の幌。丈夫で難燃性であるところが魅力でした。これらを生かして製品をつくるなら、組む相手はやはり地場産業の担い手だと考えた髙山さん。
調べた末に大阪鞄協会内にある「OSAKA KABANブランド委員会」なる存在を知り、相談を持ちかけます。同委員会は、日本屈指の技術を誇る鞄メーカーが集まる大阪で、地域ブランド「OSAKA KABAN」を推進すべく2018年に誕生したグループです。委員会を代表して試作品づくりを担当することになったのは、生野区に工場を構える株式会社シノダの代表・篠田英志さん。
篠田
「“廃車の部材を再利用したバッグを考えてるんだけど、やってくれるかな?”というお話で、まだデザイン画もない状態でしたが、うちは以前から着物をリメイクしたバッグを手がけてきた経験があったので、そんなにハードルが高いとは感じませんでしたね。それにOSAKA KABANのブランドとか技術を知っていただくいいチャンスだとも思いました。」
髙山
「そこから議論が始まって、メイン素材はレザーと迷いましたが、第1弾はコットンキャンバスに決まりました。あとは吊り輪の使い方ですが、これを持ち手にするんじゃなくて、何か別の形で、という話は最初からしていましたね。」
プロデューサーとメーカーが出会って動き出したものづくり。髙山さんの遊び心から生まれたのは、「小さな子どもがつかまれるバッグ」というアイデアでした。
篠田
「髙山さんから上がってきたデザイン案を見て、すごく斬新で面白いと思いましたね。何より、“暮らしと地下鉄”とか“親と子”をつなぐというコンセプトがしっかりしていて、さすがだなと。」
髙山
「小さい頃って、あの吊り輪を持つのに憧れたでしょう?でも手が届かないから持てないですよね。そこで父親や母親がこのバッグを持って、“ここ持ってなさい”って言ってあげたら、子どもも嬉しいだろうなと思って。そういうストーリーがあると、より愛されるバッグになると思ったんですよ。」
篠田
「ラフ画もしっかり描いていただいたので、イメージしやすかったですね。製作にあたって工夫が必要だったのは、貫通幌の生地の使い方です。あの蛇腹って、三角形の生地が組み合わさっていて、幅のあるパーツはとりづらい。だからひとつのバッグにつき、両サイドと底の3パーツを継いで使っているんです。幌はきれいに洗浄してから使いますが、雨風にさらされていた外側はやはりダメージがきついので、バッグの内面に来るようにして、さらに内張も入れてカバーしています。」
髙山
「一発でこれだけのクオリティのものがつくれるところが、さすがですよね。このバッグは、地下鉄に乗って親子が1日遊びに行くシーンを想定しているので、ペットボトルやちょっとした身の回り品ぐらいの荷物量にちょうどいいんです。」
篠田
「髙山さんの企画書と、完成した試作品をブランド委員会で見せたら、みんな絶賛していましたね。最初は廃品を使ったバッグづくりに二の足を踏んでいたメンバーも、“これなら”と前向きになってくれたようです。」
大阪鞄協会が定める独自の品質基準を満たすものとして、「OSAKA KABAN」ブランド認定のお墨付きも得たこのバッグ。turetetteというネーミングでブランド化し、今後長く愛される存在にしていきたいと、髙山さん・篠田さんは語ります。
髙山
「ユニセックスなデザインを意識しているので、男性女性問わず使っていただきたいですね。Osaka MetroとOSAKA KABANのダブルネーム商品ということで、本革製パスケースとOSAKA KABAN認定商品であることを示すチャームもついています。」
篠田
「OSAKA KABANブランド委員会ができて3年、もっと認知を広げていくために、異業種とのコラボにもチャレンジしていこうって話を委員会内でもしていた矢先だったので、いいきっかけをいただいたなと思っています。次につくるならどういう形が必要かな、という話も少しずつ始めています。ディパックなどのデザインにもトライしてみたいですね。」
髙山
「願わくは2025年の万博で、これを持った親子の姿を地下鉄でたくさん見たいですね。」
Project Partner
ディスプレイ会社、空間プロデュース会社を経て、1999年「D2」を設立。博覧会や博物館、商業空間などの企画・デザインやプロダクト、デジタルコンテンツのデザイン・制作など幅広い活動を展開する。
今回(有)D2の高山様からの依頼を受け、大阪かばん協会に所属する鞄製造メーカー5社で立ち上げた地域ブランド「OSAKA KABAN」としてプロジェクトに参加しました。