約40年間「御堂筋線」で活躍した10A系車両の部品・部材が大変身?
大阪市高速電気軌道株式会社(Osaka Metro)が2021年5月から進めてきた「廃車再生プロジェクト」。公募から数か月を経た2022年1月20日(木)、選考で選ばれたクリエイターやものづくり企業11組19案のトライアルの成果が、ついにベールを脱ぎました。
会場となったのは、Osaka Metro本社15階の講堂。本来ならばこのお披露目会、普段めったに足を踏み入れることができない「中百舌鳥検車場」で開催される予定でした。しかし残念ながら新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、場所を変えて安全対策を取りながらの開催となりました。
お披露目会では、実際に製作に関わったつくり手たちが報道陣の取材に答えながら、自らのプロトタイプ(試作品)を紹介しました。今回の「廃車再生プロジェクト」に使われたのは、約40年にわたる「御堂筋線」での現役生活を終えて廃車になった10A系車両の部品・部材。各ブースに並べられた試作品の横には、それらに使われた部品・部材の原型も置かれ、その変身ぶりがわかるようになっています。
「誰もが日常的に使えて、ほしくなるものづくり」で、SDGsにも貢献
今回のプロジェクトで大切にされたのは「誰もが日常的に使えて、ほしくなる価値ある商品を廃車から生み出したい」という想いです。昭和、平成、令和の時代を駆け抜け、暑い日も寒い日も、雨の日も風の日も、多くのお客さまにご利用いただいた御堂筋線の10A系車両。そんな車両の部品を地域の皆様と一緒に生まれ変わらせることができれば、引退後もより多くの方々に末永く親しんでいただくことができるはず。担当者たちのこのような想いがOsaka Metroの様々な部署を動かし、クリエイターやものづくり企業の皆様の多大なご協力によって、今回のプロジェクトが実現しました。
実は、Osaka Metroでは、 これまでも廃車車両から取り外した部品・部材を、「廃品販売」を通じて鉄道ファン向けに提供するほか、資源リサイクルも行ってきました。しかし今回のプロジェクトがこれまでと大きく違っているのは、「アップサイクル」である点です。アップサイクルとは、近年クローズアップされている持続可能性のための新しい方法論で、廃棄物をただ再利用・再循環(リサイクル)するのではなく、デザインや加工の手を加え、まったく別の価値あるものに生まれ変わらせることを意味します。今回の新しい取り組みは、SDGsが掲げる目標12「つくる責任 つかう責任」へのアプローチにもなっているのです。
プロジェクトに関わる人々の思いを反映するように、この日報道陣の前に現れたのは、バッグあり、家具あり、雑貨ありとさまざま。地下鉄の扉をそのままテーブルにしたものがあるかと思えば、「車両連結部分の蛇腹」や「吊り革の白い輪部分」「荷物置きの網棚」など、意外な部品・部材を、意外な生かし方で利用したものもあります。共通しているのは、「誰かに話したくなる」ストーリー性があること。生活者が、自分がつかうものの出どころや、つくり手の思いを知って、ものに対する愛着を深めていける楽しさが、そこにはあります。
2022年春にオンラインストアでの販売開始めざし、商品化へ
この日はテレビ・新聞など11の報道各社による取材が行われ、廃車再生プロジェクトの注目度の高さを伺わせました。またプレゼンターであるつくり手側も、自社以外の作品を見るのは初めてとあって、つくり手同士が作品を挟んで楽しげに談話する姿も見られました。会場に並べられた試作品は、これから最終ブラッシュアップを経て、今春に Osaka Metro のオンラインストアで販売開始予定。クリエイターやものづくり企業を巻き込んで Osaka Metro が挑む 「アップサイクル」、これからも発展の可能性がありそうです。 始まったばかりの『Osaka Metro クリエイト』の今後にご期待ください!